SideFXのWebサイトに公開されているPROJECT GREYLIGHTに関して、日本語で解説します。動画およびデータは下記よりダウンロード可能です。
イントロダクション
こんにちは。Product Gry Light のイントロダクションへようこそ。このツールは Solaris 用の直感的なマルチショットツールキットで、Andreas Weidman 氏と SideFX の共同開発によって生まれました。
このツールを作った背景には、「複数のショットを一度に扱うとき」や、「異なる部門からの書き出し、バージョン管理、USD特有の煩雑な作業」など、そういった面倒ごとを少しでも楽にできないか、という思いがありました。
このツールは、インスピレーションを与える技術デモとしての側面もありますが、実際に触って使ってもらえるように設計されています。想定しているユーザーは、学生、小規模チーム、個人アーティスト、そして Solaris にまだ踏み込んだことがないけれど興味はある、というスタジオです。まだパイプラインやコンテンツ管理システムが整っていない環境でも、これを使えば Solaris に触れて試すきっかけになるかもしれません。
このシリーズは複数の短いビデオで構成されていて、各ビデオにはちょっとした「お役立ち情報」が盛り込まれています。セットアップの手順やデモプロジェクトの紹介を通じて、一歩ずつ案内していく形になります。
次に Solaris(ソラリス)について話しましょう。Solaris はだいたい5〜6年前に登場した比較的新しい技術で、もともとは「Houdini におけるライティングコンテキスト」として設計されました。正式名称は LOPs、つまり Lighting Operations です。その目的は、複数ショットの管理・操作を可能にすることで、たとえば Katana や Gaffer のようなソフトに対抗する Houdini の回答として開発されました。
ただし、Solaris はまだ若い技術で、かなり技術的でとっつきにくい部分もあります。その原因の多くは、基盤としている USD にあります。
USD(Universal Scene Description)は Pixar によって開発されました。目的は「どんな環境でも使える汎用的なシーン記述フォーマット」を作ることで、あらゆるデータをひとつのファイルに収め、再利用や共有を効率化することでした。
本質的には、USD も Alembic(.abc)のようなファイルフォーマットの一種ですが、大きな違いとして、USD は他のファイルへのリンクを含むことができる点があります。それだけでなく、テクスチャ、カメラ、その他さまざまな要素を格納できる柔軟性も備えています。
さらに Pixar は、「このファイル形式を最大限に効率よく使うには、こういうルールで運用すべきだ」というガイドラインも定めました。これらのルールは、たとえば1,000人以上のアーティストが関わるような大規模プロジェクトでも、安全かつ効率的にデータ管理を行うためのものです。ただし、こうした厳格なルールは、小規模チームや個人にとってはかえって扱いにくい場合もあります。
Solaris と USD の関係性についてですが、Solaris は「USD を使う前提」で作られているため、Pixar が定めたルールにも基本的に従っています。Houdini 側では、そうしたルールの中でも使いやすくするための工夫や、ある種の「抜け道」も用意されていますが、基本的には USD の仕様に準拠しています。
たとえば、Solaris に Alembic ファイルを読み込んで、そのままエクスポートすると、自動的に USD ファイルに変換され、その中に Alembic ファイルへのリンクが含まれる形になります。つまり、Solaris の中ではすべてが「USD」として扱われるというわけです。
この Gry Light プロジェクトは、主にVFX分野を対象にした内容になっていますが、もちろん他分野にも応用できる部分はあります。ただ、基本的にはVFXでの運用を想定しています。
では、早速始めていきましょう。
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